そして復帰後も職場の改善に応じてくれませんでした。
その後また再発し、欠勤を繰り返していたら、自己都合退職してくれと言われました。悔しくてたまらないのですが、泣き寝入りしかないのでしょうか?
今回はこんな質問にお答えしたいと思います。
結論としては
さっさと忘れて治療や転職に力を注ぐ方がラクです。
ですが憎しみが消えない人も中にはいると思います。
- こんな状態になったのは、本当に自分だけが問題だったのか…?
- なぜ自分だけがこんな目に…
- 自分の名誉を著しく傷つけた上司や会社が許せない!
これらの気持ちは、私も過去に何百回、何千回とループ再生のように考えていた時期があったので、よくわかります。
今回はそんな人のために、過去に辛いうつで不当解雇された人が、裁判で勝訴した事例を紹介します。
この記事を読むことで以下のことがわかります。
それでは早速、参りましょう。
はじめに
私は法律や労務の専門家ではありませんので、あくまでも
- 事例を紹介すること
- 不当解雇されない自衛手段
など、その程度のものしか書けません。
ですので解雇が納得がいかなかったり、本気で訴えることを考えるなら下記の専門機関で相談してもらうことが確実です。
- 労働基準監督署
- 総合労働相談センター
- 弁護士事務所
辛いうつで不当解雇された人の逆襲!【裁判事例】
過去に辛いうつで不当解雇された事例
今回は分かりやすいように概要だけ解説したいと思います。
詳しくは以下の事件名で検索すると、詳しく知ることができます。
1.日本ヒューレット・パッカード事件
日本ヒューレット・パッカード社(以下 日本HP社)から無断欠勤を理由に「普通解雇」とされた社員Xが、地位確認、賃金、賞与等の支払いを求め、社員Xが勝訴した事例。
日本HP社は社員Xを「勤務態度が著しく不良」との理由で、普通解雇として懲戒処分(クビ)にしました。
ですが主に以下の点において、日本HP社の社員に対してのケアと解雇理由が不十分であると判断しました。
- 社員Xは在籍中に2度うつ病症状に関する診断書を会社に提出していたこと
- 社員Xは日本HP社に対し、社内で嫌がらせを受けていたとする調査願いと休職願いを提出していたが、日本HP社は社員Xの休職願いを却下した。理由は同社が実態調査をした結果「被害事実はない」としたものだった。
- 社員は40日間の無断欠勤をしていたとあるが、事前に「嫌がらせが改善されないのであれば、出勤することはできない」旨の書類を提出していたことから、無断欠勤には当たらない
結果、懲戒処分は不当として社員Xが勝訴し、日本HP社は社員Xに対して未払賃金の支払等、1600万円を支払いました。
この事案から
- パワハラやセクハラ等の嫌がらせ行為が改善されない職場
- (病気であろうと)労働者が働く意思がある
この場合は労働者側が守られるようになっています。
業務が原因である傷病の場合、会社が勝手に解雇することはできません。
そしてその意思や証拠を示すための証拠(書類やデータ)があれば、社員にとって戦うための強い武器になります。
2.東芝うつ病事件
うつ病のなった社員が3年間私傷病として休職していたが、休職期間満了によって解雇となった。
しかし社員は仕事が起因でうつ病になったので、解雇は無効であるとして会社を訴え、12年にも及ぶ裁判の結果、社員が勝訴したという事例です。
争点の決め手となった、平成23年の2月に出された最高裁の判決では、
- 社員は不眠症などメンタルの不調を訴えるようになったが、会社は業務の軽減をせず、逆に業務を追加した。(業務起因性=本件のうつ病は業務に起因する)
- 社員は精神科に通院していたが、会社や産業医に相談はしていなかった。しかし上記のようなストレス状況下では精神状態が悪化が予想されていて、さらに会社はその義務を怠ったため、社員の過失は認められない。(過失相殺=社員に過失はなく、会社に責任がある)
- 社員は過重労働によってうつ病になり、退職後の長期間の裁判によって心理的な負担が大きかった。このことから、社員が特別に精神的に弱い人間ではないと認められ、会社側の素因減額(本人の器量不足によってうつ病になったという、会社の主張)は認められない。
これらのことから労働基準法19条の解雇制限によって、社員の解雇は無効と判断されました。
この裁判では休業の損害や慰謝料などの損害賠償額の有無や額の大小について争われたが、結果的には会社側の安全配慮義務違反と判断され、過失相殺および素因減額は否定されました。
会社側は元社員に対し、約6000万円を支払う結果となりました。
東芝に限らず
- みなし残業
- 隠れ残業
- 「ノー」と言えない空気
- 精神疾患になった社員がいても改善しない職場環境
が当たり前の職場は今でも多いと思います。
そういった、職場環境が原因で精神疾患にかかった場合は労働基準法第19条により、すぐには解雇されません。
不当解雇になる例
労働問題弁護士ナビというサイトで不当解雇かそうでないかを詳しく解説してくれています。
こちらのサイトでの不当解雇になる例はこんな感じです。
- 「労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇」
- 「業務上の負傷や疾病のための療養期間およびその後30日間、ならびに産前産後休暇の期間およびその後30日間の解雇」
- 「解雇予告を行わない解雇」
- 「解雇予告手当を支払わない即時解雇」
- 「労基法やそれにもとづく命令違反を申告した労働者に対する、それを理由にした解雇」
- 「労働組合に加入したことなどを理由とする解雇」
- 「不当労働行為を労働委員会等に申し立てなどをしたことを理由にした解雇」
- 「女性であることを理由とした解雇」
これらの項目が思い当たる方は、会社側に職場の改善を訴える事ができますし、解雇されても無効になる可能性が高いです。
不当解雇を防ぐ自衛手段
限界まで無理して退職するより、まずは休職しよう
まず、パワハラや過重労働などの、仕事が原因で病気でうつ病になった場合、自己都合退職することは会社の思うつぼです。
仕事が原因の傷病は本来、会社が責任を取る必要があるからです。
ちなみに、もしあなたが自己都合退職した場合、
- 再就職するまでは無収入
- 無職期間が長引いた後、転職活動の難易度が上がる
のような不都合が生まれます。
ですのですぐに退職するのではなく、まずは休職することをおすすめします。
休職して仕事から離れることで、考えたり相談する時間が作れます。
また、心身の回復と共に判断力も回復します。
退職することは、できる限り通常の状態に戻ってから決断しましょう。
休職の心構えや手順については、こちらの記事を参考にしてください。
とは言え悪質な会社では、
休職した時点であなたを自己都合退職する方向に誘導する(切り捨てる)
という手段に出る可能性があります。あくまでも可能性としての話ですが。
そこであなたを守ってくれるのが記録です。
- 激務すぎて気分が落ち込んできている
- 上記の理由で業務改善を願い出ても退けられた
- パワハラやセクハラなどの嫌がらせを受けている
これらの理由で心身に大きな負担が生まれた時点で、録音や日記などの記録を取ることを強くおすすめします。
記録さえあれば、労基署や弁護士事務所で相談する時の貴重なカードになります。
録音は盗聴にあたるのか?
録音はよく「盗聴にあたるからやってはいけない」と言われており、なかなか実行に移せないことも多いです。
ですが不正行為の証拠を集めるための自衛手段なら、録音することは問題ありません。
詳しくはこちらの弁護士事務所のサイトを参照にしてください。
ちなみに、もしボイスレコーダーを使うなら以下の3点のようなものがおすすめです。
- リモコンやボタン一つで録音できる
- 一日中録音が可能なもの(バッテリー、メモリ容量が大きい)
- ペン型など、普段使っていても怪しまれないもの
なるべく小型でポケットに忍ばせたり、普段使いにして違和感のないものが良いでしょう。
そして、もしモノを投げられたり叩かれたりなど、暴力行為を受けた場合はハッキリと音声が残るようにしましょう。
「物をぶつけるのはやめてください」「叩くのは怖いのでやめてもらえませんか」といった感じに。
こうしたデータと一緒に、「〇月〇日、上司から顔を叩かれた。明日もやられると思うと怖くて吐きそうになる」というように、事実とその感情を日記として記録します。
さらに日本HP事件の例のように、診断書や願い出などの書類を提出し、必ずコピーを取って自分で保管しておきましょう。
これらのことをすることで、第三者から見たあなたと会社とのやりとりが透明化されます。
もしもの時のために、あなたの身を守る鎧と剣が必要というわけです。
そしてどうしても居づらくなって退職したとしても、「業務内容が辛くて辞めた」よりも「業務改善を願い出たが、応じてもらえず仕方なく辞めた」の方が説得力を持たせることができます。
うつで退職した時の私の体験談
私の場合の職場環境はこのような感じでした。
- 一年中、月平均60時間ほどの残業がある業務内容、超短納期の過密スケジュール
- 些細な失敗でも大勢の社員がいる場所で一時間以上も叱責を受ける
- 上司からのパワハラ(罵声、物を人にぶつけるなどの暴力)が当たり前
- 上司に便乗して罵る同僚がいる
このような環境で私は自律神経失調症(のちに双極性障害、そしてうつ病と変化)を発症し、医師の指導に従い、2か月間の休職をしました。
ですが復職後も職場は何も改善されていませんでした。
業種や時勢などで、業務内容が激務であることは仕方のないことだと思います。
ですが上司の機嫌次第で怒号が飛ぶような環境にいると、落ち着いて仕事に集中できません。
それにパワハラの当事者である上司に、会社側は何の改善も課しませんでした。
私はわずか一週間ほどで症状が再発して寝込み、それから一か月ほど無断欠勤をしてしまいました。
その後「もう会社には迷惑かけられないな…」と思い、電話で上司に相談しました。
その時の上司の回答は今でもしっかり覚えており、
「役立たずはさっさと辞めろ。一か月無断欠勤したから、退職日は無断欠勤する直前の日付で付けとくから。」
というものでした。
今になって思い返すと、この会社の対応は上記で紹介した
- 解雇予告を行わない解雇
- 解雇予告手当を支払わない即時解雇
に触れています。
最終的には自己都合退職という形で退職しましたが、退職日を現在の日付からさかのぼる事は、明らかに不正行為です。
現に、退職後に保険証を切り替える際、保険証の有効期限(実際に会社に所属していた期間)と離職日が合わないことを職員の方が不審に思い、
「これって解雇ですよね?」
と聞いてきたのを覚えています。
もし私に知識があれば、そういう不正解雇を見破れたかもしれませんし、病気にすらなっていなかったかもしれません。
そうなると、もしかしたら2年も引きこもることも無かったのかもしれませんし、断薬までに5年もかからなかったかもしれません。
「もしも、あの時」はもう巡ってこないのですが。
恨みの気持ちはもうほとんどありませんし、今更訴えようとは思いません。
ですが、ふと思い出してしまう時があります。
2年という時間は、普通に生きていたら短い。
だけど無力感、絶望感に打ちのめされた2年は途方もなく長かった。
私の時間を返せ。
たまにそう思い、やっぱり少しだけ、辛くなる時があります。
最後に
会社は冷酷なもので、挫折した者は容赦なく切り捨てる。
これが今回記事を書くにあたって、経験を交えて私が出した結論です。
少し悲しい意見ですが、それが競争社会で生きる、暗黙のルールだと思います。
ですが根拠が成り立つ理由があれば、あなたを守るルールもたくさん存在します。
不当な解雇や行うことや劣悪な労働条件の会社は今ではかなり減っているようです。
最近では職場の改善に努める風潮になっていますが、それでもまだまだ存在します。
ですが、零細企業の場合は、会社側が法律や労務の知識が一般社員より乏しい場合もあります。
それゆえに無意識的にブラック化しやすいのも事実です。
ですので休職制度や防衛手段などの知識をフル活用して、あなたは知識で武装して一歩退いた位置で会社と付き合う事が重要です。
あなたが今、窮地に立たされているなら、しばらく休んで考えを整理してみましょう。
専門家に相談して知恵をもらうことも良い手段です。
とにかくあなたの人生の中で、長く辛い時間を作らないように努めてください。
今回は以上となります。
あなたの回復が一日でも早くなりますように。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
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