うつが辛い時の家族も患者さんと同様にとても辛い時期ですよね。
そんな時期は患者さんに対して、どう接したらいいのかわかりませんよね。
「こんなこと言うと傷つくかな…」
「早く良くなってほしいから、自分も頑張らないと…。」
「どうにかしてやりたいけど、どうしたらいいかわからない…。」
周りの人はこんな気持ちで不安になって患者さんに接します。
ですが、どう接しても反発や批判とも取れる患者さんの反応に、周りの人は焦りと不安が増すばかりです。
これでは周りの方々も気を病んでしまいます。
本記事では元躁うつ病患者の私から、家族や周囲の方々に向けて知ってほしい事を4つ紹介します。
初めに結論を言っておくと
しばらくはそっとしておいてあげてください。
ということです。
✓本記事のテーマ
うつ状態が辛い時に家族に知ってほしい事
✓記事の信頼性
私は元々10年程前までは躁うつ病の患者でしたが、そこから復帰して今は復職もできて、結婚して家族を持つこともできています。
しかし、病気になってからは、自分がどう生きていいかわからずに、家族や周りの人にたくさん迷惑をかけたり、中には縁が切れてしまった人もたくさんいます。
復帰するまでには何度も失敗や挫折をしましたし、辛い思いもたくさんしました。
これまでに経験した失敗や、復帰のために挑戦した実体験を元にしたアドバイスをします。
✓あなたへのメッセージ
本記事は、『元患者という私の視点で、家族にこうしてほしかったなぁとか、こういうこと知ってほしいなぁ』という患者さんの気持ちが知りたい家族やその周りの方々に向けて書いています。
本記事を読むことで
うつ病の患者様への適切なアプローチや距離感がわかるようになります。
患者の心境を理解することで、こういう悩みを少しでも和らげて、ゆっくりと気長に患者様に寄り添えるようになればいいですね!
①精神論や正論は患者の心を閉ざします
精神病で臥せっている人は、健康な人から見るとグズグズといじけているように見える時もあります。
だからつい
「うつなんて心の持ちようだから、暗い気分で居たらますます悪くなるよ」
「何でそんなグズグズと考え込んでるの?鬱陶しいよ!」
「考え込んだって過去は変わらないから、次に進もうよ!」
などの叱りや励みの言葉を発してしまいがちです。
はい、私も家族や兄弟から何度も言われました。
でもその言葉と真意は、残念ながら全然患者に届いていません。
むしろそれを聞けば聞くほど心の傷が深くなり、傷口が広がっていってます。
最悪の場合、人間関係が崩壊します。
そんなこと言わなくても患者さんも当然理解しています。
理解しているしそうしたいけど、どうしても体や頭がそうなってくれないのです。
これは前回もお話ししたセロトニンなどのホルモンのバランスが崩れているから仕方のないことなのです。
うつが辛い時期の家族のこのやりとりは例えるなら、
「足の骨が折れただけでしょ?動けないわけじゃないんだから、試しに走ってみたら?」
と言っているようなものです。
どう考えても無理ですよね。
周りで見ている方も同じくらい辛い気持ちですし、世話をする大変さも想像以上のものです。
しかし、その苦労を患者さんが見ていないわけではないと思います。
だから期待に応えたいのにうまくいかない。それがとても悔しいし情けない…。
となるのです。
それに患者さんが気を許してアドバイスや会話を乞うタイミングは必ずやってきます。
その時にやんわりと話してあげればいいのです。
ただし、辛い現実を突きつけたりキツい発言は厳禁です。
しばらくは何も言わず見守ってあげて、まずは「心のエネルギーの回復」に専念させてあげましょう。
②ダラダラ寝転がってるんじゃなくて、本当に体が動かないんです
特に病状がひどい時は、一日中布団の中に居て入浴もしない。
起き上がっても体を起こすことがやっとで、食事を摂る体力もない。
意識もぼーっとしているし、そもそも生きる意欲が失われている状態になっています。
これは鉛様麻痺という症状で、ストレスや疲労が異常に溜まりすぎるとこうなります。
この時期は外出はまずできません。
何日かのタイミングで元気な時もありますが、あまり何でもやらせない方がいいと思います。
なぜなら、患者さんはこの元気な時期が嬉しくなって何でもやってしまおうとするからです。
しかし、元々無い状態からのほんの少しの回復なので、元気はすぐに尽きてまた寝込みます。
しばらくはこの繰り返しになります。
ですから患者さんができることをさせるだけでいいのです。
人から与えられたアドバイスを実行することは、患者さんにとってはキャパオーバーです。
私はこの時期に体が鈍ったからと言って家族から散歩を勧められましたが、外出は特にエネルギーの消費が激しいので、小一時間くらいでグッタリして、そこから一週間ほど寝込んでしまいました。
患者さんも本心では自由に動けるようになりたいと望んでいます。
だから今は存分に休ませてあげましょう。
③「いつ働くの?」は絶対禁句!
絶対言ってはいけない、一番言ってはいけない言葉だと思います。
この一言で確実に関係と病状は悪化します。
何よりも患者さん本人の人生で、こうなる経緯を経験してきたのも患者さんです。
患者さんこそ、このままではいけないと理解しています。
しかし、だからと言って強く念じて病気が治るものではありません。
誰よりも患者さん自身が一番、不安と絶望を感じているのです。
だから追い打ちであるこの言葉は「悪意ある鋭いナイフ」として患者さんの心に深く突き刺さります。
もちろんうつが辛い時期の家族も不安がいっぱいですし、早く回復して元気になってほしいと、心から願っていることも理解しています。
しかし、家族の方々がそう願うのは家族の感情や要求であって、患者さん本人にはそれをする状態ではないのです。
結果的に家族の要求を患者さんに押し付けていることになっています。
いつ働けるかは人それぞれの症状や生き方の反省にもよるので、私にもわかりません。
ただ一つ言えることは、
今は働くことを考える時期ではない
ということです。
患者さんは自省として今まで経験してきたものの中から、精神を歪ませた原因を探っています。
そんな自分と向き合う作業はとても集中力が必要です。
その作業が完了したら、自然に働くようになりますし、自分の道を進むようになります。
④特別扱いしないでいいのに…
不用意に患者さんの心の中に入っていくのも良くありませんが、かと言って腫れ物に触るような感じや、贔屓目になるのも避けたいものです。
なぜなら、この病気にかかる人たちは特に、他人の感情の機微に敏感だからです。
だからすぐに気を遣わせている事に気付いてしまい、逆に患者さんが気疲れしてしまいます。
さらにそのことで自己嫌悪に陥り、さらに心の傷をえぐります。
複雑な捉え方をする時期なので周りの人達もかなり気持ちが擦り減りますが、
極力以前と同じように接した方がいいと思います。
しかしこれは、いろんな人の気持ちにもものすごく繊細に関わってくるので、「これが正解」と一言では言えない問題です。
私の場合は両親が私のことを病人として、割と大らかに接してくれていて、私も感謝していました。
ですがそれを贔屓と見た兄弟からはあまりよく見られていませんでした。
そして段々と気が合わなくなってしまい、今では関係が完全に崩れてしまってしまいました。
以前と今まで通り、「あなたを(患者さんを)信じています」という気持ちで接してあげるのが一番かと思います。
まとめ
患者さんの心境は「今はしんどくて何も話せないけど、どんなことでも話したいときにはきちんと話すから、私を信じて待っててください」
それに対して家族の気持ちは「一日でも早く良くなって、以前のように元気な姿を見せてほしい」
このお互いの気持ちの食い違いを感じ取れるようになってください。
心配であるからこそあれこれと言いたくなる気持ちもわかります。
ですが、気持ちや根性で治るものはありませんし、逆に患者さんがまとめようとしていた思考が乱れてしまいます。
やり場のない気持ちが爆発することも度々ありますが、患者さん本人は自責の念はあるものの、他者を攻撃するつもりはありません。
そのあたりの折り合いを見つけながら、お互いの程よい距離感を探すことが、治療への近道なのかもしれませんね。
だから、胸が締め付けられるような思いでしょうが、今はできる限り見守るようにそっとしてしておいてください。
ちなみに当時の私の気持ちはこんな感じでした。
「病気の今の私は存在ごと消え去りたい気持ちでいっぱいだけど、みんなに恨みはありません。むしろ、みんなには迷惑かけたくないし、いつでも楽しく元気でいてほしいと思っています」
参考になれば幸いです。
あなたの大事な人の回復が一日でも早くなりますように。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
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